「醜悪な社会だからこそ美しいものを」漫画家・新井英樹が見る現代 : 日刊サイゾー
今の時代は「自分探し」といっても、何もせずに自分の中に埋蔵金みたいなものが眠っていると信じているだけですよ。たとえば、本を読むだけでステップアップできると信じて、面倒なことは何もしなかったり。そんな感じがやたらするんですよ!
ポール・ニューマンが主演した『暴力脱獄』【※1】というメチャクチャ面白い映画があるんですけど、それをネットでけなしている若い子がいたんです。「主人公がどうして反抗するのかがわからない」って。もう大前提が理解されていないんですよ! 何かに反抗することって、つまり自由がテーマの物語じゃないですか。「もう今は自由の意味すらわからなくなってるのか?」と暗澹たる気持ちになりました。どうすれば、それを元に戻すことができるのか。それが今、創作のモチベーションとなっている部分があります。
『キッズ・リターン』【※2】のような物語を、もっと多くの若い世代に観てほしいですね。どれだけ努力しても必ず何かを勝ち得るわけではない、ということを教育として示しておきたい(笑)。
それが僕の原体験ですね。自分が思い描いている理想は実現されないこともある、と。
さきほどの話にも通じますが、『暴力脱獄』を観て反抗の意味がわからないってことは、今の若い人たちは、社会からの抑圧がないと思っているのかもしれない。でもそれは、陰謀論みたいになっちゃいますけど、「抑圧なんてものはない」と思い込まされているだけなんですよ。「現状でいい」という認識は、人間としての基本的な感覚が磨かれていない。
できれば、現状を変えたいと僕も考えています。少しでも「今の社会状況は違うだろ!」と思う人が増えてほしいですよ。大宣伝されているものにみんなが飛びついたとき、いいことが起こったためしがありますか? だから、オバマに熱狂している人たちなんて、気持ち悪くてしょうがない(笑)。