給料は労働への対価ではない。この当たり前のことを理解しない人間が多い。
給料はどこから出るか。会社からではない。顧客からである。顧客が支払った代金の一部が労働者の給料になる。
では、顧客はなぜ代金を支払うのか。それは会社が顧客に提供する商品・サービスに「価値」があるからである。
顧客は、間違っても「その生産にかかったコスト」に対価を支払っているのではない。ましてや「労働」そのものに対価を払っているのではない。顧客にとっては、その商品にかかったコストや、労働など、関係ない。知る必要もない。それが100時間の労働で生産されたものでも、無人工場で自動的に製造されたものでも、関係ない。顧客にとっては「それが自分の役に立つかどうか」という価値だけが問題なのである。
ゆえに、すべての労働者は、給料を欲しければ、「顧客が満足する価値を提供する」ことを通じて、自分の給料を自分で稼ぐべきなのである。満足させる対象は上司ではない。会社ではない。顧客である。
決して給料は「労働」そのものに払われているのではない。労働者の「労働」そのものに価値があるのではない。労働を通じて生み出される価値に対して顧客が対価を払う。その対価の一部が労働者に還元されるのである。全部でないのは会社を維持・運営するために必要な間接費をまかなうためであり、税金を支払うためであり、経営の安定性を高めるべく内部留保するためである。
もし君が左派的思考でマルクスの言うように「資本家が搾取している」などと考えるなら、実際にデータを調べてみればよい。会社の売上や付加価値の何%が配当その他の形で「株主への還元」に回されているか、調べてみたまえ。(むしろ日本においては労働者が資本家「から」搾取している現状に気付くであろう。株主にとっての企業の魅力、企業の時価総額といった観点から考えてみればよい)
君が、来年も再来年も給料が欲しければ、さらには、より高い給料が欲しければ、「顧客を満足させる」ことである。これが経済の本質である。
(そこで単に評価を待つのではだめだ。「成果をあげたので昇給してほしい」を主張する義務は君にある。それを判断するのが上司の責任だなどと言うのならば、そうやって部下に目配りする上司という中間費用を君はまかなうのだから、そのぶん給料は下がる。当然ながら。自ら「中間搾取」を招いてどうするのだ。そして、交渉が決裂すれば君には転職する自由がある。おかしな話だ、会社が解雇する自由は制限されているというのだから。労働者はまったく「弱い立場」などではない)
売れない商品の生産に投じられた労働は無価値である。
成果につながらない労働は無価値である。
君の価値は「会社に何時間いたか」ではなく、「顧客が評価する何万円分の価値を生み出したか」である。
君は給料に見合った仕事をしているか? 顧客が君の仕事に対して支払った金額で評価したまえ。それが社会の冷徹な評価だ。君という人間の経済的価値だ。
もし君が会社員であれば、どれほど甘い考えを持っているか思い知るための簡単な方法がある。独立・起業してみればよい。自分がどれほど会社に依頼していた甘ったれか、身をもって知ることができるだろう。ただ、命がけの覚悟が必要だが。
そもそも、そんな覚悟が自分には備わっていないのだと気付く人が多いだろう。そうやって身の程を知るだけでも、ずいぶんマシだ。身の程を知らずに報酬や権利ばかり要求する、社会にとって有害な労働者でなくなることは。
追記:2008年12月7日
外部のサイトで当記事に対するコメントを書かれていたことに気付いた。
労働に価値などない(では給料とは何か) – newsing(ニューシング)
1対1でセールスをする規模の仕事に従事する人が取りやすいロジックで、一見するとまともな意見のように見えるが、実はそうではない。顧客の満足とは何をさすのか?「売れる=顧客の満足」なのか?、「クレームがない=顧客の満足」なのか?会社内部が舞台と成る部門では顧客=購入者ではない。工場の環境管理部門では顧客=購入者ではない。このような一見明快に見える意見ほど注意する必要がある。この論理を進めると,間接部門の給料は必要なくなる、当然役員も、顧客に直結していないという意味では間接部門であることを忘れては成らない。
という指摘があった。あらゆる指摘を歓迎する。(この文章は、そういうふうに解釈する余地がある、と気付かされた点で私にとっては有意義な指摘だった。感謝したい)
さて、この指摘に答えよう。間接部門については「社内顧客」という概念を用いて説明すればいい。以上、説明終わり。
インタビュー:京セラ 森田直行副会長「現場が統一指標で見える、人に優しい管理手法だ」:ITpro
ところで、アメーバ経営における間接部門(本社や事業所のスタッフ部門)の役割はなんでしょうか。
間接部門は売り上げがありません。そのミッションは、会社の収入に直結している人たちをどうサポートすればいいかを考えることです。間接部門で発生した経費は、製造部門にも営業部門にも按分されます。つまり、間接部門が経費を削減すれば、製造部門と営業部門の時間当たり採算も小さくできるわけです。
だから、間接部門の仕事ぶりは他のアメーバ全部から見られています。大家族のお母さんみたいなものですね(笑)。