すべての企業は社会主義を内包している
現代企業は計画経済を取り込んで発展してきた。つまり現代企業は社会主義経済を内包している。
現代資本主義は、ある意味で共産主義と結びついて発展してきた。労組やストがその代表といえる。合理主義、全体主義、革命権といった思想の現れ。労組は資本主義社会において企業内に活路を求めた共産主義だ。会社と労組(社会主義)の関係は、ヒトとミトコンドリアの関係に近い。
労組が企業に貢献してきた面もあるのかもしれないが、この「細胞内共生」は破綻をきたしつつある。計画経済が有効なのは目的がはっきりしているときだ。あらゆる物が不足している経済成長期にはそれでよかった。しかし、成熟経済においては「こうすればいい」という目的がない。
→関連図書:『パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本』海部美知、『ハイエク 知識社会の自由主義』池田信夫
そういう状況で計画経済は機能しない。これは旧ソ連が当初アメリカを上回る成長をしながら、頭打ちになって崩壊したように。そして、共産主義を内包する企業も、同様の機能不全に陥りつつあるのだ。
このことに、世の中の企業経営者、とくに起業家は、気付いている。起業家は自主独立の精神にあふれた人間であり、本質的に自由主義者の傾向が強い。一方、正反対の労働者もいる。「毎日出勤することに対して給料をもらっているつもり」「給料とは時間拘束という嫌なことへの報酬のつもり」といった、自主独立の気概がかけらもない労働者。依頼心しか持っていない輩。
起業家はこういう人間を軽蔑し、間違っても自社には採用しないようにしよう、と心に誓う。しかし、実際には誤って採用してしまうことがあるのだ。そうなったら解雇は困難。会社へフリーライド(ただ乗り)し始める。その給料は、本当に成果を上げているほかの人から「搾取」しているものだ。もちろん本当に成果を上げている人間はクサる。モラル・ハザードにつながる。企業経営への害悪である。
こういう問題労働者こそ、「資本家による搾取」を叫ぶのだ。笑い話では済まない。現代経済の大きな矛盾である。
このような問題がありつつも、なぜ会社の形態は変わらないのだろうか?
それはひとえに「替わる術」が見つかっていないからだ。世の経営者・起業家は、これほど問題の多い形式と知りつつも、ほかに替わる術を持たないので、やむなく採用しているのが実情であろう。
もし有効な代替案が見つかれば、ほぼすべての企業が、そちらに切り替えていくだろう。既存企業は、しがらみがあって難しいかもしれないが、少なくとも起業家は、自らの会社設立にあたって、新しい形態を採用するはずである。
これは現代経済の大きな課題である。21世紀知識社会に相応しい企業形態の模索が必要である。
そして、私はその解決の糸口を見つけたかもしれないと思っている。実践して成果が出ないうちは仮説のままであり、発表するに値しない(したくない)と考える。もし成果が出たら発表したいと思う。
歴史的には、フリーターは「非正規雇用」ではなく、20世紀初頭までは技能をもつ職人が腕一本で職場を転々とするのが当たり前だった。請負契約を蔑視するのも間違いで、これは産業資本主義時代のイギリスでも19世紀の日本でも「正規雇用」だった。しかし第1次大戦後、重工業化にともなって工程が大きな工場に垂直統合され、職工を常勤の労働者として雇用する契約が一般的になった。いわば資本主義の中に計画経済的な組織としての企業ができたのである。
実をいうと、「エンプロイー(従業員)」という概念は近代になって生み出されたもので、時代を超越した社会慣行ではない。強い意思を持つ人間を従順な従業員に変えるために、二十世紀初頭にどれほど大規模な努力がなされ、それがどれほど成功したかを見ると、マルクス主義者でなくてもぞっとさせられる。近代工業化社会の職場が求めるものを満たすために、人間の習慣や価値観を徹底的につくり変える必要があった。

