カルチャーギャップ

このエントリーを含むはてなブックマーク November 3rd, 2008 | posted in culture, Japan |

英語・米語と日本語。良し悪しではなく、とにかく違う。

財務報告 - Wikimedia Foundation
Finance report - Wikimedia Foundation

当初の予定より少々遅れましたが、ウィキメディア財団理事会が財団の2006/2007年度決算を承認したことをご報告いたします。

Although a bit later than we would have originally liked, I’m pleased to announce that the Wikimedia Foundation Board of Trustees has approved the Foundation’s 2006/2007 financial statements.

日本語と英語のニュアンスが全然違う。英語のほうは「ちょっと遅れちゃったけど、財務報告のお知らせができてうれしい(I’m pleased to announce)」と。

これを直訳しなかった翻訳はグッドジョブだろう。日本語で上記のようにあっけらかんとされると、馬鹿じゃないかと思ってしまう。

日本人は、遅れたら詫びる。悪びれないのは、大人ではない。だが、その価値観を米国人に押しつけようとするのも馬鹿だ。あるのは違いであって、善悪ではない。

遅れが生じた理由についてご説明いたします。当初、決算は2、3か月前に公開される予定でしたが、フロリダの会計監査人との作業および財団での財務レビューに時間がかかり今日まで延期になりました。

また、さらに時間がかかったのは何故でしょうか。当初の予定どおりに監査が完了せず、さらなる日数を要することはじゅうぶんに起りうることです。財団のプロジェクト(およびその参加者)は昨年一年を通じて顕著に成長し、支出(取引の件数)の増加につながりました。すなわち、こなすべき監査作業の量も増えたのです。また、財団職員(たとえば会計係)の交代も数回あって、我々は記憶に頼ることができませんでした。監査にかなりの時間を要したのは以上の理由によるものですが、いずれにせよ肝心なのは監査が完了したということです。

“Why the delay?” you might ask. We had originally hoped to post the statements a few months earlier, but more time was needed at the Foundation level to review finances and work with our Florida-based auditors.

And why did we need more time? It’s fairly normal for audits to take longer to complete than was initially predicted. The Foundation’s projects (and their popularity) grew significantly over the past year, which meant that spending (number of transactions) increased. That means there was more work to be done. Also, there had been some turnover in Foundation staff (e.g., the accountant), which resulted in some loss of institutional memory that made it harder to do the audit preparation. So it isn’t really all that surprising that the audit was fairly time-consuming. It’s complete, and that’s what matters.

※大変な状況であったこと、NPOでリソース不足であることを鑑み、詳しい状況を知らずに非難するのはナンセンスである。だから、ここでは報告の内容、とくに示されている事実に関して、とやかく言うことはしない。ここでは、その伝え方、表現を論じる。トラブルの報告における、米国人と日本人の考え方の違いである。

この報告は、日本人の感覚では、気が狂っている。企業のIR発表を考えてみよう。財務報告の遅れを詫びずに言い訳する。その株主総会は問題になるだろうし、株価にも影響するだろう。その程度のことを予想できず、言い訳と自己保身のための報告を公の場でする人間がいるとしたら、トラブル続きで神経をやられてしまって、心神喪失状態に陥っているのかと心配する。

いずれにせよ肝心なのは監査が完了したということです。

It’s complete, and that’s what matters.

「とにかく完了したんだから、細かいことはごちゃごちゃ言わないでください」

こんな報告をしてくる部下がいたら即刻解雇する。

この一文は、彼我の価値観に絶望的な断崖が横たわることを感じさせる。

米国人がみなこうだとは限らないが、これはWikipedia財団という有力NPOの財務報告だ。どちらかというと平均以上に良心的な人たちであると期待してもよいだろう。だから、この例が米国人と日本人の価値観、良心のありようの違いを示している、というのは、あながち言い過ぎでもないだろう。特徴的なところをかいつまんで、大げさに取り上げているのは確かだ。しかし、その特徴は価値観が根本的に違う点を浮き彫りにもしている。

米国人とは、お互いに分かり合えないことを前提に、差を埋めるようなコミュニケーションをしなければならない。改めてそう思った。

言語や文化ではなく、文明が違うのだ。全世界のなかで考えれば特異な日本文明。「ヘン」なのは日本人のほうだ。だからといって、グローバル・スタンダードという名の米国流にあわせる必要もない。必要なのは、そのコミュニケーションの目的と、合目的な手段だ。

※本稿はWikipedia財団の財務報告の遅延を非難する内容では一切ないことを付け加えておく。

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