Solaris: ソラリス
本編(1)
正常な人間とはなんだろう? ひどいこと、下劣なことを一度もしたことがない人間だろうか? その通り。しかし、下劣なことを一度も考えたことがないなんて人間がいるだろうか? いや、ひょっとしたら考えたことさえなくても、十年か三〇年か前にその人間のうちにひそむ何かが勝手に考え、湧き出てきたことくらい、あるんじゃないかな。人間本人のほうはそれから身を守り、忘れてしまい、自分がそれを実行に移さないとわかっているので、それをもう恐れることもないーーーそんなことが。さて、今度はこんなことを想像してみて欲しい。あるとき突然、他の人たちの真っただ中で、昼日中にそれが実体化して肉を備えた姿となって現れ、きみにまとわりつき、それを叩き潰そうとしてもどうにも叩き潰せないーーーそうなったら、どうだろう? それはどんなものだ? pp.117-118
本編(2)
もしも彼女がだね・・・・・・いや、もしもこれが醜悪な化け物だったとしたら、どうだろう。その化け物があなたのためにはなんでもするわ、なんて言って、つきまとってきたら? きみは一瞬もためらわないで、その化け物を抹殺しようとするんじゃないのかね? pp.260
本編(3)
確かに、そういうことかもしれない。その場合、やつはまったく・・・・・・ぼくたちのことを踏みつぶし、粉砕しようなんてつもりは全然なかったということになる。あり得ることだ。ただ何という意図もなしに・・・・・・ pp.326
レム本人(1)
宇宙がたんに「銀河系の規模に拡大された地球」だと思うのは間違っている。宇宙は、私たちがいまだ知らない新奇な性質を備えているのではないだろうか。地球人と地球外生物とのあいだに相互理解が成り立つと考えるのは、似ているところがあると想定しているからだが、もし似たところがなかったらどうなるだろうか?
レム本人(2)
つまり、私が重要だと考えていたのは、ある具体的な文明を描いてみせるというより、むしろ「未知なるもの」をある種の物質的な現象として示すということだったのである。
レム本人(3)
私の信ずるところでは、そして私の知る限りでは、『ソラリス』という本は決して宇宙空間におけるエロスの問題を扱ったものではなかったはずだ。
レム本人(4)
SFはほとんどいつも、こんなことを前提としてきた。つまり、人間が出会う「他者」がかりに何らかのゲームをするとしても、人間は遅かれ早かれそのゲームのルールを理解するだろう、というのである。そして、そのルールはたいていの場合、戦争の規則だった。それに対して私はソラリスの海が体現している他者としての存在を擬人化して理解するような道をすべて塞ぎ、コンタクトが人間と人間との間のような形で実現しないようにしたかったのだ。

