Commitment: 会社観
ある人の発言。
- 自社の発展を誇りに思う感覚が理解できない。
- 会社は潰れるのが当たり前の時代。
- もはや終身雇用の時代でもない。
彼はY世代、就職氷河期世代だ。言わんとすることは分かる。しかし私の考えは違う。
自社の発展を誇りに思う感覚が理解できない。
自分が自社を発展させたら誇りになるだろう。
「自分が自社を発展させる」というコミットメントがないのかもしれない。なら転職したほうがいい。
「仕事を熱心にやるなんてばかげている」というタイプなら、「適当にやれば」とアドバイスする。しかし、少なくとも彼はそうではない。仕事に関する考えをしっかり持っているようだ。ならば入れ込める会社を見つけた方がいい。
あるいは「自分には自社を発展させる力がある」という思いがないのかもしれない。ものごとをしっかり考えるタイプのようなので、やればできると思うんだが。
会社は潰れるのが当たり前の時代。
これは、なんとなく形成された「常識」だろう。→analog | Argument: ダメな議論
いつの時代も会社は潰れている。→東京商工リサーチ:全国企業倒産状況
いまより経済規模が小さかったことを考えると、昭和50年付近は今よりひどいんじゃないだろうか。
もはや終身雇用の時代でもない。
会社によるだろう。
私の会社は終身雇用でありたいと思っている。とはいえ、それは「長くいると有利=途中で辞めることに負のインセンティブを課す=流出防止策」という意味での「終身雇用」ではない。
ちょっと考えれば分かるように、企業は大きな採用コスト、育成コストを負担するのだ。それを正当化するのは終身雇用(無期雇用)だ。コストかけたのだから、長くいてもらった方がいい。
- 優秀な社員には長くいて欲しいに決まっている。
- 優秀ではない社員は育てようとするに決まっている。
- どうしようもない社員には辞めて欲しいに決まっている。
ということだ。(これは私の価値観で「決まっている」といっているのであって、使い捨て派の経営者なら違うだろうが)
ちなみに「無能な社員でも辞めさせられない」という意味で終身雇用というならば、そんなものは害悪でしかない。
ところで「終身雇用」という言葉の定義はあいまいなので、Wikipediaで確認してみた。
学校を卒業してから1つの企業に就職し、その企業で定年まで雇用され続けるという、日本の正社員雇用において一般的な雇用慣行である。
via: 終身雇用 - Wikipedia
この定義に即して言うならば、「学校を卒業してから1つの企業に就職し、その企業で」という部分は好ましくないと考えている。学生の職業選択能力の低さが理由。最初の会社が定年まで働ける会社かどうかは分からない。学生の会社選びは高い確率で間違う。
※ちなみに終身雇用の起源まで考えれば、これが当時は有効だったこともわかる。つまり急速な産業発展、労働者不足、農業地域の若者の集団就職。農家のお子さんを預かる前提は「一生面倒みます」だ。当たり前だ。
※もっと多くの大学生に長期型インターンシップ・プログラムへの参加を促す政策が必要だと思う。経済全体での採用ミスマッチによるコストを削減する効果があるし、適職とのマッチが増えるという福利の効果もある。
一方、企業としては、以前より雇用流動性が高まることにより、応募者が「ジョブ・ホッパー」かどうかを見極める必要が大きくなっている。かなり優秀な人間でも2年で辞められては損になる(採用・育成・退職コストを含む計算をしてみればいい)。ゆえに、ジョブ・ホッパーの存在が企業にとって「採用コスト」になっている面はある(経済学的に言えばリスクはコストに換算できる)。
とはいえ、新卒から定年まで一社で、というのが理想的ではないのは前述の通り。転職禁止など言語道断。ならばどうすべきか。適正な雇用流動性(平均生涯転職回数)があるのではないだろうか。それはおそらく1〜2回(2〜3社)であると思う。個人の人生、個人差はあるが、統計的にはそれくらい。そこに落ち着くような政策により、経済全体での適職化(ミスマッチのコストを減らし、労働の満足度も向上する)を目指せるのではないかと思う。
脱線したが、「終身雇用が崩壊した」というよりは、「雇用流動性が本来の適性水準へ回帰する現象」に過ぎないと考えている。問題は、この変化に政策が追いついていないことであり、不可避というより望ましい変化だというのが私の立場だ。
このように冒頭の3項目いずれについても私は同意できなかった。
彼へ−−−考え方を変えれば、個人として幸せな道は見えてくるはずだ。ただ、変化は痛みを伴う。
追記:もともと高度成長期の日本の大企業ではジョブ・ローテーションという仕組みでゼネラリストを育成していた。これは転職(社を移る)しなくても、社内で転職(ジョブ・チェンジ)できる仕組みだったともいえる。いま減ってきたが、あらためて見直してもいい考え方だと思う。社内でより適性のある仕事に再配置する方向性により、昭和とは異なる形態の「終身雇用」を復活させるというのは。「社を移る」のと「社内で職を移る」の、経済の観点からは後者が好ましいと思う。

