Critical Writing: 2週間で小説を書く!

このエントリーを含むはてなブックマーク July 3rd, 2008 | posted in literature, book |

2週間で小説を書く! (幻冬舎新書) 清水 良典 (著)

清水氏は多くの作家志望者を指導した経験にもとづき、陥りがちな落とし穴を教えてくれる。

 谷崎潤一郎の名作『細雪』が超豪華な配役と絢爛豪華な衣装で映画化されたとき、試写を見た谷崎夫人(『細雪』の主要人物、幸子のモデルである)の洩らした感想は、わたしたちの頃は畳のへりを踏まなかったですね、という一言だけだったという。
 細部は怖い。

「文章の細部の怖さ」よりも、谷崎夫人の怖さが伝わってくる、、、というのは冗談だが、じつに「細部」は怖い。後述の『アフターダーク』(村上春樹)ではITエンジニアが登場する。私は元ITエンジニアとして、ほんのわずかな違和感でも見逃さなかっただろう。しかし、何も違和感が無かった。専門的なことを書いて「ボロ」が出ないのはプロの仕事だ。相当な取材の裏づけがあるのだろう。

小説というものはふだん書くのと同じ文章で書かれているのだが、架空の「目」から書くという、ふだんの言葉の使い方とはまったく異なる奇妙な語り方をしているわけである。その「目」の設定をとりあえず決めないことには、一行も書き出せないものなのだ。

なるほど、言われてみれば、たしかにそうだ。ふだんの文章の書き方ではない。

「目」といえば村上春樹の『アフターダーク』が面白い。次のように評する人がいる。

ここで大切なのは、視点が三人称全知であることではなく、カメラなのだというところにあるのだと思う。上で「カメラのような全知的な視点」と書きましたが、むしろここで強調されるのは「カメラ的な視点の限界」と言うべきものです。

via: 村上春樹『アフターダーク』

「目」の描写が独特で引き込まれる。一方、会話の部分では会話に没頭する。客観的な視点の部分と、会話の部分が交互にあらわれ、構成にリズムが生まれている。適度な緊張感を保って最後まで読むことができる。

■描写

 小説を書くのに最も大切な書く力とは、具体的な人物や行動や風景を、目の前にあるかのように再現する力、すなわち<描写>の力である。

「孤独の極致」を言葉にしてしまうのは最悪だし、「気持ち」を直接説明する表現はたいてい小説には必要ない。こういう文章を書くことなく、人物の孤独な気持ちが読み取れるように場面や言動を書くのが小説である。

なるほど。これは知らないと陥り易そうだ。気持ちを「記述」してしまいそうだ。自分では「より正確に読者に伝えたい」と思って。つまり、それが「描写」だと誤解して。

小説には非日常的な事態や出来事が起こる。しかしそのためにはその手前の「日常」がしっかりと描けていなければならない。

言われて気づく。たしかに、いきなり「事件」から始まる小説は、感情移入する前に話が先に進んでいってしまう。読者を置き去りにする感じ。

■小説の魅力

ものの見方と考え方、それを書く文章の語り口が独自であること。つまり、文体が個性的であることだ。それが小説の魅力の第一だと私は思う。

同感だ。世界観×文体。

■完成

「完成」とは、幻想である。

完成させる、のではなく、終わらせると考えるほうが実際的である。

たしかにそうだ。これは小説に限らない。ほとんどの創造的な仕事について言えることだろう。私の体験では、ビジネス上の資料。ちなみに、「リリース(release)」という言葉には「手放す」という意味がある。

クリエーターであると同時に批評家であること。それはどんな作家にも、音楽家にも、とにかく何かを表現しようという人間には不可欠な要素だ。

自分の創作物を、客観的に批評する能力。これが最も難しく、プロとアマを分けるのだろう。

See also: Writing School: 一億三千万人のための小説教室

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